本プロジェクトは、高齢者支援施設の協力を得て、主旨に賛同し、お誕生日会を計画したい主催者を公募する。その主催者を中心に誰のお誕生日会か、どのような空間で、どのような演目で、どのようにお祝いするのかを話し合い、未来のお誕生日会の予行演習を行うというものである。
また、バースデーアクションやビデオメッセージを収集し、オンラインで残し、未来へ共有する活動も行う。
私は、人はどのように未来を想像することができるか、ということを考えて制作活動を行ってきたように思う。それは例えば参加者が占い師になりきって自分の家族や友人、パートナーなど好きな人の未来を占う『Hyper Lucky Fortune Telling (2014 - )』や、老人ホームに入居していた祖母を含む高齢者へ100年後の未来を想像し話してもらい、その音声を大理石に刻みレコードとした彫刻作品『Future Record Collection(2014)』などがある。『Hyper Lucky Fortune Telling』は、自分の未来についてはうまく想像することができなくても、誰か大切な人の未来であれば、願いのような形で想像することができるのではないかという推測から実施した。実践を経てそれは、占いという形を借りながらも、実際には意志の力が未来を作っていくのではないかという考えに確信を与えるような機会となった。また、『Future Record Collection』では、100年後という私自身も含めて協力者の誰もがおそらく不在の未来を想像し、それは現実性よりも空想に近いものではあったが、フラットに話をすることができたという発見があった。
これらの経験をベースに今回取り組む『あなたの好きな人の、100年後のお誕生日会を計画する』というプロジェクトを思いたったのは最近第一子を出産した経験に由来する。生まれたての子供は何もかもが新鮮で、毎日写真や動画を撮り続けた。ある時、飽き足らず、0歳児を抱く父親にカメラを向けると彼はおどけて、「〇〇ちゃん、86歳のお誕生日おめでとう!…君がこの動画を見ているということは私はもうこの世には…」といった具合で、彼も私も不在の未来へ向けてバースデイメッセージを語りだしたことがあった。ふざけたその振る舞いに私は笑った。そしてとても印象に残った。
私は今まで作品制作を通して未来を想像する方法を考えてきたつもりでいたが、実際に自分が歳を取り、不在となる世界について具体的に想いを馳せたのはその瞬間だったように思う。
その実感から、大切な誰かの何年も先のお誕生日を祝うこと、お誕生日会を計画し、そのことを考えることは、年代も時代も超え、少しワクワクし、例え自分が不在であっても未来を想像することにつながるのではないかと考え、本プロジェクトを発案した。
現時点で私はまだ高齢者ではない。ただ、これから間違いなく、高齢化し、死滅する。けれど、自分がいなくなった先も世界は続き、大切な人や誰かの生活は続く。
未来を想像することは、おそらく前を向くことでもある。そのことを、他者と共有しながら楽しむためにこのプロジェクトを実施したいと考えている。